根深い問題を抱えた「普天間基地」の移設問題に一筋の光明が見えたかに思えたのが、2009年民主党・鳩山由紀夫政権誕生の頃。
鳩山氏は衆院選挙直前に沖縄での集会で「最低でも県外。できれば国外を目指す」と発言してその後、物議を醸し出すことになる。
民主党・鳩山政権が模索した「徳之島移設案」
「実は政権交代が起こる前年に民主党は『民主党・沖縄ビジョン(2008)』を策定。その中で普天間基地の移転に関して『県外移転の道を引き続き模索すべき』『戦略環境の変化を踏まえて、国外移転を目指す』と明記されており、決して鳩山氏の独断ではありません。
ところがその後、民主党の圧勝により鳩山政権が誕生。『明治以来、初めて沖縄の声に耳を傾ける政権の誕生』に、県内は大きな期待に包まれました」(テレビ局記者)
その時、県外移設の有力候補として注目を集めたのが、鹿児島県・徳之島である。
「2009年12月頃、徳之島の町長達から『是非に』という声が上がりましたが、メディアからこの情報がもれ、危険だという反対の声が巻き起こり「徳之島移設案」は頓挫。
しかし、今から考えると米軍基地を徳之島に移すだけでは、日本国内の米軍基地問題はいっこうに解決しない。
この辺りから海外移設へと鳩山政権も舵を切っていきました」(前出・テレビ局記者)
そんな折、鳩山首相周辺で急浮上してきたのが「テニアン島」への移設である。
幻の「テニアン島」移設案
テニアン島とは、北マリアナ諸島に位置する島。サイパン島からおよそ8キロの距離にあり、面積はおよそ100平方キロメートル。戦後はアメリカの信託統治領となっている。
「グアムのアンドリース基地に海兵隊のヘッドクォーターがあるのに、実戦部隊が沖縄にいては意味がない。沖縄に危険な滑走路を新たに作るよりも、テニアン島のウシ飛行場を整備した方がより安全。
海兵隊全部をワンセットでグアム&テニアンに移せば、そうした問題が一挙に解決する。これはあり得ると鳩山首相周辺も当時、頭をよぎったようです」(前出・テレビ局記者)
しかし、鳩山首相は2010年5月4日、沖縄県の仲井眞知事に対し、「県外、国外」移設の断念を伝え、県民の期待を大きく裏切る結果となった。
失望した沖縄県側は、現行案の辺野古沿岸部案をも受け入れ撤回する事態に発展。
「普天間基地」問題は、さらに混迷を深める結果となった。
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