「ギンバル訓練場」に見る軍用地跡地利用の問題点その1

ギンバル訓練場

ギンバル訓練場は沖縄県金武町にあったアメリカ海兵隊の訓練場。
1972年に「ギンバル訓練場」と「嘉手納第3サイト」が統合されギンバル訓練場となり、2011年に全面返還されました。

ギンバル訓練場跡地利用は、軍用地の今後を占う意味でもとても興味深く、様々な問題も見られるようです。

ギンバル訓練場の歩み

ギンバル訓練場は、1953年4月、琉球列島米国民政府は、さらに新しい土地を接収するため強制的な土地接収を開始。
1957年10月3日、米国民政府は131,808坪の土地が強制接収。11月「ギンバル訓練場」として使用開始します。

1972年5月15日、沖縄返還に伴い「ギンバル訓練場」と「嘉手納第3サイト」が統合され、「ギンバル訓練場」として提供開始。
1996年12月2日、SACO最終報告「土地の返還」に条件付き返還が盛り込まれます。

2011年7月31日、全部返還。2012年から撤去工事が始まりました。

条件付返還後の跡地利用

ギンバル訓練場の返還は、1996年12月2日の SACO最終報告「土地の返還」に盛り込まれた措置のひとつ。

新たなヘリコプター着陸帯を金武ブルー・ビーチ訓練場に建設し、消火訓練施設及び泥土除去施設をキャンプ・ハンセンに新築し移設させた後に、1997年を目途にギンバル約60ヘクタールを返還するという条件付き返還です。

ギンバル訓練場は2008年1月に日米合同委員会で全面返還が合意されました。
2011年7月に返還されたギンバル訓練場の跡地利用計画は、ギンバルの海岸と豊かなマングローブの自然を生かしたウエルネス事業の開発が進められ、2013年には、海洋療法児童リハビリセンター、フィッティングセンター、ヘルスケアセンター、診療クリニックなどの建設が完成しました。

ギンバル訓練場の具体的な跡地利用の現状

金武町では、町の活性化を図るために平成20年1月に日米合同委員会で全面返還が合意され、平成23年7月に返還されたギンバル訓練場の跡地利用計画を推進。
ギンバル訓練場一帯は、美しい海岸線やマングローブが群生する億首川、田芋や稲などの水を湛えた田園風景が広がる豊かな自然環境にあります。

その地域の特性を活かしたウェルネスの里づくりを目指し、ギンバル訓練場の跡地利用計画として策定された事業が「金武町ふるさとづくり整備事業」です。
この事業は、地域住民の健やかな成長と安全・安心を守ることを推進するため、住民健診や医療の充実、リハビリ等による健康増進と心身の癒しを図ることを目的に地域医療施設及びリハビリ関係施設等を整備するものです。平成25年10月末に施設は完成しました。
ギンバル訓練場跡地利用計画

地域医療施設

施設名称:「KIN放射線・健診クリニック」
管理者:医療法人社団 菱秀会(りょうしゅうかい)
住民健診や特定健診、人間ドック等を実施し、病気の予防、早期発見、治療を行い、地域住民の健康維持増進に努めます。また、最新の放射線治療機器を導入し、がんの放射線治療を実施します。
KIN放射線・健診クリニック

ヘルスケアセンター

施設名称:「KINスポーツ整形クリニック
管理者:医療法人ぎんばるの杜
金武リハビリテーションクリニック

筋肉や骨、関節などの疾患、外傷を治療する整形外科。また、生活習慣予防等の疾病予防のため運動療法を実施します。

KINスポーツ整形クリニック

フィッティングセンター

施設名称:「株式会社 佐喜眞義肢
管理者:株式会社 佐喜眞義肢
主に変形性膝関節症という高齢者の多くが抱える加齢性膝疾患の痛みに対処する義肢装具の製作。製造する義肢装具は特許を取得しており、県内外で広く活用されています。
株式会社佐喜眞義肢

海洋療法指導リハビリセンター

施設名称: 「発達支援センターぎんばるの海
管理者:学校法人 智晴学園
発達障害児支援の充実を目的に3歳から18歳までの児童を対象とした児童デイサービス。海域でのトレーニングを含めた感覚統合療法を実施します。
海洋療法リハビリセンター

金武町ベースボールスタジアム 金武町フットボールセンター ギンバル温泉ホテル

ここに軍用地跡地理由に関する興味深い「論文」があったので、抜粋して紹介します。

「沖縄軍用地の過剰開発プロセスにおける自治体の役割」by難波孝志
人口約 140 万人の沖縄県に、沖縄本島だけで16 もの野球場と 20 を超える陸上競技場、そして 11 のサッカー・ラグビー球 場が必要なのでしょうか。
施設の予約状況を見ると、夏休みと2 月のプロ野球キャンプの時期を除いて、これらの施設の利用頻度は極めて低い水準にあリます。

これは、日本政府による沖縄米軍基地に対するアメでもありました。

しかしこうした過剰開発は、自治体の人口や財政規模に比して、圧倒的に高額な公共投資による事業が行われ、それらが適正に利用されていない状況を指しています。

これまで研究対象とされることかが少なかった沖縄の軍用跡地再開発を題材にして、沖縄は過剰に開発されているのではないか、そういった問題意識から、過剰開発はなぜ発生するのか、 沖縄県及び沖縄地元市町村(自治体)の役割に焦点をあてて検討しています。

軍用返還跡地再開発への自治体の関わり

2012 年、軍用跡地再開発にとって大きな転換期が訪れます。基地と沖縄振興のリンクに加えて、軍用返還跡地再開発がそれらとリンクして、今後10年間の沖縄振興は返還跡地の再開発に注力され、そのやり方次第では、さらなる過剰開発が進行する可能性が高いと見られます。

なぜなら、これまでの沖縄振興策が沖縄県や市町村などの地方自治体ではなく、沖縄開発庁(現在は内閣府沖縄総合事務局)という国家機関の主導で行われてきたからであり、こうした公共土木工事の展開そのものが自己目的化してきたからでもあります。

なぜ従前居住者がいない軍用跡地再開発に自治体が関与し、公的資金がつぎ込まれるのか。
軍用返還跡地再開発に対する沖縄県及び自治体の果たす役割について、3つの問題点があります。

第1点として、軍用跡地再開発は、沖縄の基地依存体質を変える方策として注目されていることです。軍用跡地は、米軍基地の返還によって生み出されています。その活用の在り方が、補償型振興からの脱却と期待されているのです。

第2点は、国から軍用地に支払われる土地賃貸料(以下、軍用地料)の問題です。米軍による土地の強制的な接収以降、かつての土地所有者は生活の場を失いあるいは低水準の地料に苦しんできました。「島ぐるみ土地闘争」以降、地料は徐々に引き上げられ、土地 を取られた人と取られなかった人の立場が逆転するものさえ出てきました。

加えて、1998 年以降、軍用跡地利用に対する公的資金による補償が実施されるように なりました。
その理由は
・米軍に土地を強制的に接収され低額の軍用地料で苦しみ土地返還を求めてきた軍用地主が、返還後に高騰した軍用地料に頼るようになり、生活のために土地返還に反対するようになってきた
・不安定な軍用地料に生活を依存するよりも、跡地利用によって自立した生活を成り立つようにすることが望ましいことは言うまでもない
・そのためには、軍用地料依存から抜け出すためのクッションになる政策がず必要。その一つが、返還地で収入が得られるようになるまでの補填措置としての給付金制度である。

軍用跡地は、返還されているので、すでに軍用地ではない。補償の必要はないはずだが、そこに公的な支援の必要性が生じているというのです。

第3点は、都市再開発理論におけるアクター間の利害調整の必要性による自治体介入の問題です。
近隣の地価上昇は、自分の土地の地価上昇を生みだし、逆に近隣の地価が低い場合は、自分だけがその土地に投資しても地価が上がることはありません。

結果的に、地主間の相互牽制が働き、近隣の地価上昇をお互いに待って再開発は進みません。
そこに再開発における公的資金投入の必要性が生じる、 というのが再開発における公的資金投入の論理です。

しかし、公的資金の投入には、逆機能も存在します。
すなわち税金を投入するためにはアクター間の利害を調整して、「誰にも損をさせない」構造を目指さなければならないことになるのです。(金武レッド・ビーチ訓練場の横顔と問題点 (軍用地跡地利用を考えるその2))

沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法(跡地利用特措法)の概要

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