ちむどんどん経済効果を検証する! 朝ドラ「あまちゃん」を検証~

ちむどんどん経済効果

2022年前期のNHK朝ドラに、沖縄を舞台にした「ちむどんどん」が決定。
アフターコロナの時代を睨み、沖縄では撮影場所を巡る”聖地巡礼”に、早くも大きな期待がかかっている。そこで、このシリーズでは「朝ドラの経済効果」について、詳しくみていきたい。

「なつぞら」「ちゅらさん」の『朝ドラ』フィーバー

ちゅらさん
なつぞら
記念すべき朝ドラ100作目となった広瀬すず主演「なつぞら」(2019)。その舞台に選ばれたのが北海道の十勝。地元では放送が決定すると、まず「なつぞら応援推進協議会」が立ち上がった。

「ヒロインなつが育った柴田牧場の場所こそ秘密ですが、市内数箇所でパネル展を開催。ロケ写真や衣装・小道具の展示を始め、お土産も販売。
またネットでは牧場めぐり、ガーデンめぐり、グメル・スポットを公開するなど、夏に向けておもてなしの準備をはじめました」(あおぞら応援推進協議会関係者)

そして朝ドラ100作の中でも強く印象に残り、シリーズ化もされた「ちゅらさん」(2001)。当時の沖縄の観光客減少に歯止めをかけ、再び沖縄ブームを巻き起こすきっかけとなった。

「小浜島は、朝ドラの舞台になるまでは訪ねる人も稀でしたが、放送開始後観光客が殺到。そんな状態が3年続きました。
西表島を臨むロケ地には”ちゅらさんの碑”が今も残っています」(竹富島町役場関係者)

そして「朝ドラのロケ地」として最も人気が高かったのが、「あまちゃん」(2013)「どんど晴れ」(2007)の舞台となった岩手県。
特に「あまちゃん」の舞台となった三陸復興国立公園には、今も海外を含め大勢の観光客が訪れている。

そこで「あまちゃん」の舞台で知られる”じぇじぇじぇの国”に2019年春に潜入。「思い出のロケ地」で徹底取材。朝ドラの経済効果を検証してみよう。

前年5000人だった「海女センター」の入場者数が20万人突破!!

あまちゃん
東京から東北新幹線で青森県八戸までおよそ3時間、さらにJR八戸線で三陸海岸を下ること2時間、そこは『じぇじぇじぇの国』の玄関口久慈駅である。

駅前の噴水広場の真ん前には「北三陸観光協会」が入っていた、あの久慈駅前デパートがお出迎え。今はテナントも入っていない無人ビルだが、見覚えのある「北の海女」「北三陸鉄道」「潮騒のメモリーズ」の三連看板は、当時のまま残されている。

市役所の観光交流課を訪ねて、早速お話を伺った。
「東日本大震災のあった2011年には5000人を割り込んでいた『海女センター』の入場者数が、『あまちゃん』が放送された2013年にはなんと20万人を突破。番組が終わった今も、夏の海女フェス、秋祭りの時期を中心に5万人を超えるファンの皆様が来られています」(観光交流課スタッフ)

リピーターの中には、驚くべきことに外国人の姿も多く見られるという。
「『あまちゃん』は全世界10カ国で放送され、特に親日家の台湾では3回も放送される人気ぶり。花巻空港から観光バスで訪れる皆様のために、小袖海岸への道の拡張工事も行われました」(前出・スタッフ)

衰えを知らぬ「あまちゃん」効果。その現状をこの目で見るために”北限の海女”が暮らすメインロケ地「袖が浜」を訪れた。

小袖漁港で「まめぶ汁」を味わい、久慈駅で「夏バッパのウニ丼」を発見!!


 

夏ばっぱ(宮本信子)始め海女さんたちが、「いつでも夢を」を口ずさんでいた小袖漁港は、夫婦岩を始めワイルドな奇岩に囲まれた『北限の海女』の聖地。
長い堤防の先には、ヒロインのアキが飛び込んだ白い灯台も見える。

7月から9月までは、海女さんによる素潜りの実演も行われ、獲れたてのウニを味わうことができる。ウニはシーズンオフだったため、”おかずかおやつかわからない微妙な食べ物”として話題を呼んでいた「まめぶ汁」を小袖海女センターで味わう。

実はこれがことの外、美味い!!
「まめぶ汁」とは、クルミや黒糖を包んだ団子を煮込んだ郷土料理。冠婚葬祭のハレの席に振舞われてきたが、震災後は炊き出しと共に全国に知れ渡った。

急な石段を登って「ストープさん(小池徹平)」の監視小屋から「袖が浜」の絶景を一望。しかし、ここまできたら、やはり三陸産の美味しい”ウニ”が食べたい!!
“ウニ”といえば「夏ばっぱのウニ丼」。そのモデルとなったウニ弁当を探し求め、再び三陸鉄道久慈駅へ。駅舎にあったのは、その名もなんと「三陸リアス亭」。

ここのウニ弁当は、ウニの煮汁で炊いたご飯の上に、三陸産の蒸しウニをびっしりと敷き詰めた、まさに味の宝石箱ではあるまいか。1984年に三陸鉄道が開通した当時から工藤クニエさんが夫・清雄さんと守り続けきた”幻の駅弁”の味。「あまちゃん」といえば、やっぱりウニは欠かせない。

『走る聖地』三陸鉄道を満喫する旅!!

じぇじぇじぇの経済効果
翌朝、いよいよ久慈駅から「北三陸鉄道(北鉄)」こと三陸鉄道に乗って「あまちゃん」のロケ地を巡る旅に出た。

「2019年3月23日の全線開通は、震災復興のシンボルだけに、メディアも40社100人が殺到。電車通学が夢だった女の子が高校を卒業したにも関わらず制服姿で乗ってくるなど、開通当時はいろんなドラマがありました」(三陸鉄道関係者)

久慈を出て、宮古、釜石、そして盛(大船渡)に至る道程は全長163キロ、4時間半にも及ぶリアス式海岸縦断の旅だ。景色に見とれること30分。最初に降り立ったのは、袖が浜の最寄駅「袖が浜駅」として「あまちゃん」に登場する堀内駅。ヒロイン・アキの親友ユイちゃん(橋本愛)が、「アイドルになりたーーい!」と、駅のホームから叫ぶシーンでも有名になった駅である。

しかも、ここから今でも語り継がれる名場面の舞台は、目と鼻の先。その名場面とは、
みんなの反対を押し切り、アイドルを目指して上京する春子(小泉今日子)を乗せた「北鉄」が、大沢橋梁に差し掛かる。すると、浜で大漁旗を振って見送る夏ばっぱの姿が。ところが春子は後ろを向いたまま、夏ばっぱに気付かない。

何とも切ないシーンの撮影場所は、堀内駅から歩いて10分程。訪れたこの日、潮の香りと共に桜が咲き、菜の花やレンギョウが咲き乱れる聖地には、なにやら甘酸っぱいトキメキがあふれていた。

再び「北鉄」に乗ること30分。ユイちゃんの家の最寄駅「畑野駅」として登場するカラフルな田野畑駅に到着。”カンパネルラ田野畑駅”とも言われる通り、駅舎側には宮沢賢治の詩碑も見られる。

実はこの駅舎からすぐ目の前で、「あまちゃん」のラストシーン。アキとユイが手にサイリウムを持ってトンネルに向かって走っていく名場面が撮影されている。

「実はあのラストシーンは、あのトンネルともう一つ白井海岸のトンネルを使って撮影されました。何度もテイクを重ねたため、我々が鉄道のトロッコに2人を乗せて何度も往復しました(笑)」(前出・三陸鉄道関係者)

また「お座敷列車」の撮影では、こんな苦労話も飛び出した。
「アキちゃん、ユイちゃんのが歌う『潮騒のメモリー』で〽アイラブユーの”ユー”でトンネルを出なければならない。2テイク撮ったのですが、実はまだほんの少しずれています。もしスピンオフ企画があれば、今度はピタッとキメてみせますよ」

最後に久慈駅からほど近い「喫茶リアス」のモデルとなった喫茶モカで、名物の卵サンドに舌鼓を打って、『じぇじぇじぇの国』ともお別れ。震災復興の旗振り役を務めた「あまちゃん」のロケ地は、放送から6年経った今も、まだまだ熱かった。

次回は、朝ドラ史上最も経済効果があったと言われる「あまちゃん」の経済効果について、データを駆使して徹底分析してみよう。

文:島右近 (放送作家・映像プロデューサー)
バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。沖縄は離島も含め何度も訪れ、伝統文化からスピリチュアルまで執筆多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ヶ原で死んでいた』(竹書房新社)を上梓。現在、FRIDAY DIGITALなどにもコラムを公開中。

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