ユネスコの諮問機関「国際自然保護連合(IUCN)」は5月10日、日本政府が世界自然遺産に推薦した「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について登録するよう求める勧告を発表。
7月16日から31日にオンラインで開かれるユネスコの世界遺産委員会で登録が正式決定される見通しとなりました。
登録されれば、国内の世界自然遺産は、1993年の屋久島(鹿児島)、白神山地(青森・秋田)、2005年の知床(北海道)、2011年の小笠原諸島に続く、5件目となります。
経済効果を期待する一方、受け入れ態勢を心配する声
しかし、登録への道は厳しかった。登録を巡って2017年に政府がユネスコへの推薦書を提出後に、同年10月IUCNが現地調査を実施。
ところが本当北部の候補地では、米軍北部訓練場跡地が編入されず、推薦区域が点在する「飛び地」などの課題が指摘され、2018年5月に登録延期を勧告されてしまいました。
政府は19年2月に再推薦。20年5月に勧告が予定されていましたが、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行で今年に持ち越されるなど、紆余曲折を経て登録が正式決定される運びとなりました。
これに対して沖縄の玉城デニー知事は「今回本当北部のやんばる地域と西表島の生物多様性が国際的にも貴重であることが認められ、この自然環境を保全することが沖縄県の使命であることを重く受け止めています。引き続き国や地元町村と連携して、世界遺産にふさわしい持続可能な地域づくりに取り組んでまいります」とコメントを発表しています。
一方、地元・国頭村の前区長で、環境保全やガイドとしてツアーを行っている平良太さん(62)は「やんばるの豊かな亜熱帯の自然などが評価され、とても喜ばしい」と声を弾ませた。
そして「登録されると、より多くの人が来るはず。絶滅危惧種の樹木や希少生物を保護するためにも、行政などが発信しているルールを守ってもらうことも重要」と話しています。
また東村観光推進協議会の小田晃久事務局長は、
「やっとという感じだ。登録予定地域の周辺でもやんばるの自然を楽しめる場所はある。来訪者を地域に案内できるよう、受け入れ態勢などについて話し合っていきたい」と、早くも経済効果を期待する声も上がっている。
そうした中、増加が予想される観光客の受け入れ態勢に懸念する声をある。
大宜味村でエコツーリズムを実施している「NPO法人おおぎみまるごとツーリズム協会」の宮城健隆理事長(75)は、「コロナ禍でなかなか会合が開けないこともあり、各地域での観光客の受け入れや森林保全のあり方など十分に話し合いができていない」と課題を口にする。
世界自然遺産と共に、経済効果が期待できる朝ドラ「ちむどんどん」
沖縄島北部”やんばる”の嬉しいニュースは、世界自然遺産だけではありません。
2022年前期のNHK朝ドラに、沖縄を舞台にした「ちむどんどん」が決定。アフターコロナの時代を睨み、沖縄では撮影場所を巡る”聖地巡礼”に、早くも大きな期待がかかっています。
女優の黒島結菜演じるヒロイン・比嘉暢子が生まれ育った故郷「やんばる地方」に、一体どんな経済効果をもたらすのか。最新のニュースを取り上げて見ていきましょう。
ここでまず、「やんばる地方」について、今一度おさらい。
「やんばる(=山原)」とは、沖縄本島の最北端に位置する「国頭村(くにがみそん)」、隣接する大宜味村、東村からなる森の国。3つの村にまたがる「やんばるの森」は、2016年に「やんばる国立公園」に指定され、ヤンバルクイナ、ノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなど希少な固有種が暮らす生物の多様性豊かな地域なのです。
特に沖縄本島の最北端に位置する「国頭(くんじゃん)」は、95%が森林の”奇跡の森”。那覇空港から車で約4時間弱。面積の23%を米軍海兵隊の訓練場が占める基地の街でもあります。
2022年の朝ドラ「ちむどんどん」(NHK)は、2021年秋頃クランクインの予定。
広い田園風景やサトウキビ畑は、沖縄県国頭郡今帰仁村。綺麗なビーチや街中は名護市内で行われる予定だと言われています。
3月3日、情報番組「あさイチ」(NHK)の番組内で、ヒロインを生中継で発表したオクマプライベートビーチ&リゾートの担当者は、「コロナの影響で観光客が激減しているが、ドラマを観て一人でも多くの方がやんばるに足を運び、地域活性化に繋がると嬉しい」とコメントしています。
また撮影の候補地となる国頭村観光協会も「コロナ禍で暗い話題が多い中、明るいニュース。
ドラマのテーマとなる沖縄料理ややんばるに残る沖縄の原風景を全国に広め、コロナ収束後の観光回復に繋がって欲しい」と意気込みを語っています。
「ちむどんどん」とは、沖縄の方言で「チム(肝=心臓、心)」が高鳴る様子を示す言葉。
ここで朝ドラ「ちむどんどん」のストーリーをザックリおさらいしましょう。
「2022年、沖縄が返還されて50周年の記念すべき年の朝ドラに決まった『ちむどんどん』。ヒロイン・暢子(黒島)は、1960年代にやんばる地方・国頭村のサトウキビ農家の4人きょうだいの次女に生まれました。マイペースで明るく育った暢子は家族の絆に励まされながら、沖縄が本土復帰した1972年に西洋料理のシェフを目指して上京。やがてふるさとの食に自分らしい生き方を見出し、沖縄料理のレストランを開業するといった物語です。
主演する黒島以外にも沖縄出身の女優・仲間由紀恵や大河ドラマ『麒麟がくる』で織田信長の妻・帰蝶役を演じて注目を集めた川口春奈、さらに上白石萌歌の名前も出演者として取り沙汰されています」(テレビ局記者)
”やんばるの森”で、未使用の実弾を発見 「世界自然遺産」より問題解決が先決
世界自然遺産への登録。そして朝ドラ「ちむどんどん」と嬉しいニュースが飛び込む一方。
今年1月24日、沖縄県国頭村安田の米軍北部訓練場跡地で未使用の実弾が見つかっていたニュースは、記憶に新しい。
「発見現場は同跡地内のFBJヘリパッド付近。実弾は直径12ミリ、全長約70ミリで、地中15センチのところに埋まっていました。
実弾を発見したチョウ類研究者・宮城秋乃さんによると24日、26日にも同じ場所から米軍のものとみられる空砲も合わせて16もの実弾が発見されました。
5月17日のタイムスにも記事が・・・。
同訓練場には実弾射撃場が建設されましたが、1970年12月末に住民たちの反対によって訓練は中止されています。
その後の1972年5月15日の『5・15メモ』では、『実弾射撃は北部訓練場の指定射撃場内で認められる』とされ、『着弾区域が設定されるまでは実施しない』とも記載されています。
宮城さんによると『実弾射撃が行われていたとすれば、他にも埋まっている可能性がある』と警鐘を鳴らしていました」(テレビ局記者)
これに対して沖縄県は、着弾区域の設定がないことから、「実弾射撃訓練は実施されていない」と明言。
沖縄防衛局も「訓練を行ったことは把握していない」とコメントしているものの、地元ではこうした問題をはっきりさせてから、世界自然遺産を申請すべきだという声も根強い。
来年は、沖縄返還から50年の節目の年。世界自然遺産に登録され、朝ドラによる経済効果への期待が高まる今こそ、こうした問題を真っ先に解決すべき
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